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(声明)改憲と連動し、国民から自由を奪う秘密保全法案の制定に反対する
                                2013年6月7日
                Stop! 秘密保全法反対共同行動及び賛同者


はじめに
 自民党安倍政権は、今年3月設置した「国家安全保障会議(日本版NSC)の創設に関する有識者会議」の中で、参議院選挙後の秋の臨時国会に、秘密保全法案(特定秘密保全法案)を提出する方向で検討していることが明らかになった。そもそもこの秘密保全法案は、2006年の自公政権の時から政府内で検討が始まったもので、2009年に誕生した民主党政権の下でも、2010年の尖閣諸島沖事件の際の映像流出問題を一つの理由にして、秘密保全のための法制に関する検討を行ってきた。そして、2011年8月、政府の「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」(以下、「有識者会議」と表記)は、「秘密保全のための法制の在り方について」と題する報告書を提出した。
 この報告書では、①国の安全②外交③公共の安全及び秩序の維持の3分野を対象に、国の存立にとって特に秘匿を要する秘密を「特別秘密」に指定し、この故意の漏えい行為、過失の漏えい行為、特定取得行為、未遂行為、共謀行為、独立教唆行為及び煽動行為をそれぞれ処罰するものとし、法定刑として5年以下又は10年以下の懲役刑を提案している。
 また、従来にはない提案として、秘密情報を取り扱わせようとする者についての適性評価制度の導入が検討されている。この評価の対象は秘密の作成・取得・伝達者のみならず配偶者も検討されており、評価の観点は、①我が国の不利益となる行動をしないこと、②外国情報機関等の情報収集活動に取り込まれる弱点がないこと、③自己管理能力があること又は自己を統制できない状態に陥らないこと、④ルールを遵守する意思及び能力があること、⑤情報を保全する意思及び能力があることとし、調査事項も、①人定事項(氏名、生年月日、住所歴、帰化情報を含む国籍、本籍、親族等)、②学歴・職歴、③我が国の利益を害する活動(暴力的な政府転覆活動、外国情報機関による情報収集活動、テロリズム等)への関与、④外国への渡航歴、⑤犯罪歴、⑥懲戒処分歴、⑦信用状態、⑧薬物・アルコールへの影響、⑨精神の問題に係る通院歴、⑩秘密情報の取扱いに係る非違歴とかなり広範なものである。
 民主党政権はこの報告書を受け、国会に法案を提出する予定であったが、日本弁護士連合会や日本新聞協会など様々な団体・市民の反対の声を受け、国会に法案を提出することができなかった。ところが、民主党政権が自民党政権に替わっても問題点は何も変わっていないのに、安倍政権は法案を提出しようとしているのである。しかし、以下の通り、この法案はあまりに問題が多い。

1.そもそも制定する必要がない
 そもそも有識者会議は尖閣諸島沖事件の際の映像流出問題をきっかけに設置されたが、果たしてこの時の映像は「国家秘密」といえるものなのであろうか。映像を流出させた海上保安官は国家公務員法で立件されたが、起訴猶予となり、罰せられていない。処罰すべくして処罰規定がなかったということではなく、罰するに法定刑が低きに過ぎたということでもない。尖閣諸島沖事件の際の映像流出問題は口実にされただけで、法律制定の理由にはならない。
 また、国家公務員法や自衛隊法、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法など現行法によって、既に秘密保護法制は整備されている。にもかかわらず、有識者会議の報告書では現行法の不十分さが立証されているとはいえない。以上の点から、今このような秘密保護法制を新たに制定する必要はないといえる。

2.国民から国家などの情報を覆い隠す秘密の拡大
 1980年代の国家秘密法案が対象にした秘密は防衛と外交に関するものであったが、今回の秘密保全法案が対象にすると思われるものは、防衛・外交のみならず「公共の安全と秩序の維持」も入っている。この表現は非常に抽象的であり、そのため福島原発事故後のSPEEDI情報やTPPの交渉に関する情報など何でも秘密事項になりうる。
 また、秘密の指定は秘密の作成・取得主体、すなわち、国の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体、行政機関等から事業委託を受けた民間事業者・大学も行うとなれば、この点でも秘密の範囲が歯止めなく拡大する可能性がある。民主主義国家において国民が意思決定を行う際に、正確な情報は不可欠なものであるが、秘密保全法案は情報公開の流れに反して国民から国家などの情報を覆い隠す危険性がある。

3.国民を萎縮させる処罰対象の拡大と厳罰化
 秘密保全法案が秘密の作成・取得主体を国や自治体に限定せず、行政機関等から事業委託を受けた民間事業者・大学にまで拡大していることは、処罰対象が公務員に限らず、広く民間人にも及ぶことを意味する。また、特定取得行為や独立教唆行為及び煽動行為も処罰の対象にするということは、国民の知る権利に応えて取材・報道活動に従事する報道関係者の活動も処罰される可能性がある。
 そして、従来の秘密保護法制・規定における最高刑は、国家公務員法では懲役1年以下、自衛隊法では懲役5年以下となっているが、秘密保全法案では懲役10年以下での法案化が検討されている。とすると、これだけ広範な国民が処罰の対象になること、また、実際に法律が適用されなくても法律の存在自体が国民の表現活動に対して大きな萎縮効果を持つ。

4.さまざまな国民の権利侵害
 このような法案が制定されたならば、広く国民への影響が必至である。まず、報道関係者を筆頭に広く国民の取材・報道など表現の自由が制約され、国民の知る権利が十分に保障されないことになり、第二、第三の「西山記者事件(外務省機密漏洩事件)」が発生しかねない。
 また、適性評価制度の導入によって、関係者のプライバシー権や思想・良心の自由が侵害され、場合によっては大学等の学問の自由も侵害される可能性がある。さらに、規定の仕方によっては秘密保全法違反で起訴された者の公開の法廷で裁判を受ける権利や弁護を受ける権利が侵害されることもありうる。
 秘密保全法案とマイナンバー(共通番号)法は密接な関係がある。秘密保全法案によって「国家のプライバシー」を保護し、国民の知る権利を侵害する一方、マイナンバー法によって「国家の知る権限」を保障し、国民のプライバシー権を侵害するという、従来の国家と国民との関係を180度転換することになってしまう。両者はセットでその問題点を考えなければならない。

5.連動する憲法改正問題
 自民党は2012年4月に、憲法の全面改正を狙う日本国憲法改正草案を発表した。この第9条の2では自衛隊を国防軍に変える規定があり、さらに第4項には、「国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める」と規定している。また、同じく自民党が同年7月に発表した、集団的自衛権行使の全面解禁を立法で狙う国家安全保障基本法案には、第3条第3項で、「国は、我が国の平和と安全を確保する上で必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・制度上必要な措置を講ずる」と規定している。すなわち、自民党は憲法改正又は立法改憲によって、日本が軍隊を持ち、戦争をする国家になることを目指し、そのような国家には秘密保護法制が必要であると考えているのである。そういう意味で、秘密保全法案は改憲問題と連動しており、憲法を改悪させない取り組みの一環として秘密保全法案も制定させてはならない。

6.必要なのは情報公開と国民の権利保障
 有識者会議の発言内容を記録したメモが破棄されたことが発覚し、その後も法案は具体化されていると言われているのに、国民には一切説明がなく、この法案自体秘密主義の下で制定されようとしている。今、必要なのは、国家の秘密を覆い隠し、国民のさまざまな権利を侵害する秘密保全法案の制定ではなく、国民主権の下で国民が適正な民主的決定を行うための情報公開である。私たちは秘密保全法の制定に反対であり、同法案が国会に提出されないことを強く求める。

Stop! 秘密保全法反対共同行動
【参加団体・個人】日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)、日本ジャーナリスト会議(JCJ)、マスコミ9条の会連絡会、9条フェスタ市民ネット、日本婦人有権者同盟、全国労働組合総連合、日本国民救援会、青年法律家協会、日本民主法律家協会、自由法曹団
【連絡先】日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)事務局 
〒113-0033 東京都文京区本郷4-37-18 いろは本郷ビル2階 TEL:03-3816-2988 FAX:03-3816-2993
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