機関紙10月号の記事を転載します。
『死刑のある国ニッポン』 森達也・藤井誠二著 (金曜日 2000円)
ブログでも死刑存廃の話題でコメント欄がしばしば沸騰する。「被害者遺族の気持ちになれば…」が死刑存置論者の主な言い分だ。
本書はJCJ賞受賞作『死刑』の著者・森達也と、多くの殺人事件被害者の遺族を取材した藤井誠二の対論。
藤井は存置の立場だが、単純に「遺族の心情」を言い立てて死刑制度維持を主張するわけではない。森は廃止の立場から制度の矛盾を論証する。
日本は世論調査で死刑制度維持が8割を超える。地下鉄サリン事件、光市母子殺人事件の影響が考察され、実際には凶悪犯罪が減っているにもかかわらず、その事実を伝えないメディアのありかたが批判される。裁判員制度と死刑にも1章が割かれている。
「死刑になるため」が動機と供述された無差別殺人も考察され、「死刑」から見た直近の社会史ともなっている。
2人のジャーナリストは学者的な議論はしないが、我々がとかく避けがちな「国家論」に及ぶ刺激的な対談だ。 (保坂義久)
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