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 『神奈川支部通信』 48号(2004年3月29日発行)から、故・友枝隆生さんの文章を再録します。友枝さんは小学館の歴史や美術の書籍の編集者として活躍されました。


『蒙古襲来』をめぐって~網野善彦氏を偲ぶ~ 
           友枝隆生(編集者・元小学館)

 日本の歴史を根本から見直し、新しい社会構成史を提起した中世史家網野善彦さん(元神奈川大学教授)が2月27日に亡くなった。
 71年、当時名大に在職中の網野善彦さんに小学館版『日本の歴史』(全32巻)の第10巻『蒙古襲来』の執筆を依頼、翌年、隠岐方面の取材調査に同行した時、タクシー運転手から土地の旧家の話を菊や、予定を変更してそのお宅を訪問し古文書を見せてもらったことがあった。初対面の相手をも信頼させる網野さんの誠実で大きな人柄に感心した。
 73年秋からは原稿取りと打ち合わせに名古屋までほぼ毎週出かけた。帰りの新幹線で3.40枚の原稿を読みながら、第一番目の読者という編集者の特権を享受した。
   
 そこには、若き日の網野さんが唯物史観と国民的歴史学運動の挫折体験の中から再起・構築した、まったく新しい中世史が姿を見せていた。多様な非農業民(漂白・遍歴する様々な職人・商人・芸能民・乞食法師など)の活躍、天皇と賤民・悪党・海賊の関係や東国と西国の社会構造の違いが語られ、多元的な中世社会の実像が展開されていった。執筆が進むにつれて、この本は必ず歴史学界を震撼させることになると確信した。
 しかし、原稿は遅れにおくれて締切り日は過ぎ、やっと全12章の半分6章まできたところで、依頼枚数の650枚を越えた。この巻だけを2冊にするわけにもいかず、1ページ17行建ての原則を急遽19行に増行し、心ならずも入手原稿を削らせてもらいながら、残りの半分の執筆をせきたてた。発刊は結局1ヶ月遅れたが、通常巻の約60ページ増で何とか74年10月上旬刊行にこぎつけた。「新しい歴史学」の誕生であった。
 本書では、時代や社会構成全体の変化を発展段階論や経済の下部構造の基底からのみとらえるのではなく、生活の諸相や文化構造の変化でとらえ、13世紀~14世紀を日本社会全体の「民族史的転換」の画期とした。反響は予想以上に大きく、「事件」的ですらあった。全国書籍協会から74年度日本の全出版物を代表する300冊に選ばれて、海外に英文で紹介された。西洋・東洋・日本史や考古学の各歴史学会を代表する『史学雑誌』75年5月号の回顧と展望では、ほとんど全分野の筆者が本書に言及、画期的研究として絶賛した。そして『無縁・苦界・楽』(平凡社)が出される頃から、「網野史学」の名が一般に流通していった。
 80年代以降は歴史学のみならず、学際的に考古学・民俗学・文化人類学へ、さらには小説やアニメ・映画にまで影響が及び、全共闘世代の評論家たちにも「網野史学」がよく利用されていった。
晩年の網野さんは、少し照れ気味に「老マルキスト」と自称していた。合掌。

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