プロフィール

JCJkanagawa

Author:JCJkanagawa
FC2ブログへようこそ!


最近の記事


最近のコメント


最近のトラックバック


月別アーカイブ


カテゴリー


最新の記事


カテゴリー


ブロとも申請フォーム


 「神奈川支部通信」25号(2001年6月15日発行)から、相羽宏紀さん執筆の記事を掲載します。
 相羽さんは、小野田桃子さんのインタビューを、株式会社きかんしの冊子「ぷりおーる
インタビューでしています。

 身体感覚の大切さー桃子の事件簿を読んで
            相羽宏紀 (フリーランスライター)

 私は「現場」という言葉が好きだ。現場に行って生身の人間と語り合い、体験をともにする-それが取材というものだと思っている。
 小野田桃子さんの「桃子の事件簿」という本を読んで、自らの身体感覚を通して現場-暮らしと仕事の現場-をとらえた体験にもとづく文章につくづくと共感した。


 現場には人間の喜怒哀楽、冒険や決断、困難や快楽、屈辱や誇り-さまざまな人間の生々しい思いが満ちあふれている。それを自分の五感、身体感覚を賭けてつかまえて、世の中に意味あるものとして発表する。テーマは何でもいい。それが、ジャーナリストであれライターであれ(どこが違うのか、私にもわからない)「物書き屋」の仕事だと思う。
 「桃子の事件簿」は、大自然の奥地の神秘的な体験でもない、政財界の奥の院の秘密情報の暴露でもない、ごくありふれた私たちの日常茶飯事の「事件」に目を止めて、それに対する著者の主体的な関わりを描いている。俗にいう悲劇もあれば喜劇もある。並の人間だと何とおせっかいな、と思うくらい「事件」に積極的に関わっていく。
 日射病で死にかけているホームレスがいる。女性の一人旅の夜の宿にパンツ1つで忍び込もうとする若者がいる。電車のなかでケンカして泣く女性と猛々しく怒る女性がいる…。もしかしたら私たちも出会ったことのある出来事に著者は過剰なまでの反応を示し、それらの「事件」の当事者に関わっていく。
 1つまちがえば身の危険をともなうかもしれない。しかし、関わらずにはいられないのが著者だ。それぞれの「事件」の一応の結末まで立ち会って、ほろ苦い思いをしながら自分に戻る。その過程に、血肉を賭けてと言うと、そんな大げさなと著者に笑われるかもしれないが、自分の身体感覚をせいいっぱい張り詰めて立ち向かう。
 こういう感覚が現代人には乏しくなっている。交通機関内や街頭での理不尽な暴力や不測の事故に対して、見て見ぬふりをするのが平均的な現代人だ。そんなエセ良識を振り捨てて、著者は身近に出会う人々とどこまでも誠実に関わる。その身体感覚が文体を通じて正直に伝わる。老いた私には少々照れくさい文体だが、それが著者の身上だろう。
 近ごろ、「物書き屋」を自任していても、ちっとも現場に行かない人が目立つ。インターネットという便利な情報手段が普及して仮想現実だか何だかしらないが、ちょっとした文章なら書く材料は簡単に集まる。しかし、現場を知らない、身体感覚を喪失した文章が多すぎるように思う。とてもこのままでは21世紀の日本は文運隆盛とはいかない。
 最近、数は少ないが身体感覚をとらえた著作に何冊かお目に掛かった。自分の非行少女時代の赤裸々な暴力行為(当然ながら負けたり勝ったり、結果はいろいろだ)を描いた中野亜由子著「グラスビーズ」(こうち出版)、国内外のマラソンで自ら走った体験と有名無名の走者の運命をランニングそのままの軽快な文体で表現した植松二郎著「人びとの走路」(NHK出版)だ。おひまがありましたら、それらの本を「桃子の事件簿」といっしょに読んで身体感覚を取り戻す方が増えたら、たぶん著者は喜ぶだろう。 




相羽さん訃報記事

01年11月号の相羽さん執筆記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://jcjkana.blog102.fc2.com/tb.php/208-1051cc67

 | ホーム |